ピースプーン

「ピースプーン」第3回

秋葉原は万世橋付近にあるモダンな建築「交通博物館」が70年の歴史に幕を閉じたことは、ニュースでも話題になっていたほどです。現実には大宮へお引っ越しするのですが閉館間際には、別れを惜しむ大人子供で、入場制限をしていた程、大盛況だったことが記憶に新しいものです。街頭インタビューでは「ずっとあるものだと思っていた」「なくなってしまって残念です」との意見が多数。多くの方々から愛されていた証拠ですね。移転計画は大分前から決定されていたようで、その報告書に記載されている移転理由はというと「「築後70年を経過し、老朽化、陳腐化が著しく、さらに用地が狭隘なため、今後、発展が望めないのみならず、早晩その事業の維持すら困難になることが予想されます。(2004年2月16日付け)とのことだそうです。新しい移転先では、新たな展示で鉄道好きの大人や子供も楽しませてほしいものです。
交通博物館を例に挙げるまでもなく、ついうっかりしていると、日々の中では「あるものだと思って安心していると無くなってしまう」ということに遭遇します。交通博物館のように世の中の認知度が高ければ、別れを惜しむこともできるでしょう。しかし、あるものだと思って安心していると、ある日突然なくなっているものがあるのです。それは町の買い食いスポットです。ある日何の前ぶれもなく突然襲いかかってくる事件「都合により閉店させていただきます」の張り紙。数年来のお散歩コースに組み込まれている総菜屋の焼き鳥、肉屋のメンチカツ。もう少し歩いて、あそこで買い食いするまでこの空腹は我慢しようね、と自分に言い聞かせていた目の前に差し出される一枚の告示。喪失感と虚脱感が一気に押し寄せてくる瞬間。「誰の断りを得て閉店するのか〜!」とやりきれない怒りをあたる場所も無く、「またしても、おまえもか〜〜!」と心中嵐が吹き荒れながら、半べそかいてスーパーの総菜コーナーで間に合わせるといった諦め買い食いを、もう何度となく経験してしまいました。時代は確実に昭和から平成へと変容を遂げているのですねえ。                
皆さまは買い食いをしていますか?もちろん私はしています。小さい頃ならば学校帰りに駄菓子屋で、かるめ焼きやソース煎餅を買い食いしては親に怒られる(その頃、我一族内に買い食い禁止令が発布)というスリルに満ちた甘美に浸り、年代と共にソフトクリームやクレープの買い食いで両親を諦めさせることに成功。現段階では、ふらりと立ち寄る街のお肉屋さんにてメンチカツを買い食いしなければ気がすまない、という立派な大人に成長いたしました。買い食いの楽しさは、目の前で作られる行程で一緒に作り上げるという錯覚に陥ること。その出来立てほやほやを安価で購入できること。そして完成後、風景を楽しみながら食べることができるという優越感に浸れること。これが買い食いの醍醐味ともいうべき定義だと自負いたしております。 このように私の例を見るまでもなく、買い食いは一種の文化であることが、おわかりいただけることだと思います、がしかし、買い食い女王の私でさえも予期せぬ出来事は、静かにひたひたと蔓延しているように思えます。現在は、突然の襲来に悔いが残らないよう、お気に入りの買い食いができる商店へは、あるべく足繁く通ってあげるのが、買い食い文化財保護にも役立っていることになると思っています、大げさですがね。どうぞ皆様も明日はないと思え、とばかりに、身近な町の商店の有難みを存分に味わってみてくださいませ。買い食いだけでなく、別の改たな発見ができるかもしれませんよ。

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